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頭痛

◆ 頭痛 ― 鍼灸臨床における統合的アプローチ


1. 頭痛の西洋医学的分類と発症機序

頭痛は国際頭痛分類第3版(ICHD-3)に基づき、大きく一次性頭痛と二次性頭痛に分類される。鍼灸臨床では一次性頭痛(緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛)に対するアプローチが中心となる。


1-1 緊張型頭痛(Tension-Type Headache: TTH)

■ 発症機序(解剖学的・神経生理学的観点)

  • 頚部筋群(後頭下筋群、僧帽筋上部線維、肩甲挙筋など)の持続的緊張により筋筋膜に虚血が生じ、ブラジキニン・ヒスタミン・プロスタグランジン等の発痛物質が放出され、ポリモーダル受容器が感作される。
  • 長期的には、上位脊髄(C1–C3)の求心性感作とともに**三叉神経頚部複合体(Trigemino-Cervical Complex: TCC)**における痛覚処理の過敏化が生じる。

■ 特徴

  • 両側性で持続性。締め付けるような鈍痛。動作によって増悪しない。
  • 睡眠不足・精神的ストレス・姿勢異常が誘因。

1-2 片頭痛(Migraine)

■ 発症機序(血管説+神経炎症説)

  • 古典的な血管仮説では、脳血管の収縮→拡張により三叉神経血管系が刺激され痛みが生じるとされた。
  • 現在では、三叉神経末端からCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)等の神経ペプチドが放出され、血管周囲に無菌性炎症を引き起こす「神経原性炎症モデル」が主流。
  • 中枢側では視床下部、脳幹(縫線核、青斑核)の活動変化、自律神経系の過活動も関与。

■ 特徴

  • 発作性。片側性。拍動性。悪心・光過敏・音過敏を伴う。
  • 女性に多く、エストロゲンの急低下(排卵期・月経前)との関連が深い。

1-3 群発頭痛(Cluster Headache)

■ 発症機序

  • 視床下部の概日リズム異常により三叉自律神経反射が過剰に活性化。
  • 内頚動脈周囲の血管炎症反応による痛覚刺激。
  • 発作時にはCGRP、VIP(血管作動性腸管ペプチド)、PACAPなどが上昇。

■ 特徴

  • 一側性、眼窩部に激烈な痛み。自律神経症状(流涙、鼻汁、縮瞳、眼瞼下垂)を伴う。
  • 深夜に多発、決まった時間に起こる。アルコールが誘因。

2. 東洋医学的観点からみた頭痛の病因病機

2-1 弁証分類

証型主症状関連臓腑弁証要点・機序
肝陽上亢頭痛が刺すように強い。怒りやすい、顔紅潮肝・腎肝腎陰虚により肝陽が亢進し、陽気が上逆して頭痛を引き起こす。
肝気鬱結側頭部痛、情緒不安定、胸脇苦満肝・胆情志抑鬱により肝気が鬱結し、経絡を閉塞して頭部に気滞が起こる。
血虚風擾めまい、顔色不良、動悸肝・心血虚により肝風が内動し、風が上擾して頭痛を発症。
気虚下陥頭重、倦怠感、午後に悪化脾・胃中気の昇提作用が低下し、清陽が頭部に届かず頭痛が生じる。
痰濁中阻頭重感、胸悶、嘔気脾・胃・肝脾虚による水湿停滞が痰湿となり、上焦を阻滞して痛む。
外感風寒後頭部痛、寒気、首こり太陽経(膀胱)外邪(風寒)が太陽経に侵入し、経絡気血の流れを阻害する。

2-2 経絡的診方

  • 太陽経(膀胱経):後頭部の頭痛。外感風寒タイプに多い。
  • 少陽経(胆経):側頭部の片頭痛。肝胆の熱や鬱血による。
  • 陽明経(胃経):前頭部の痛み。消化不良や湿濁に由来。
  • 厥陰経(肝経):頂部の痛み。肝血虚・肝風内動に関連。

3. 鍼灸アプローチの臨床的応用

3-1 基本方針

  • 症状の部位・性質・発生パターンにより弁証論治+経絡弁証を行う。
  • 急性期(実証)には瀉法、慢性・虚証には補法を用いる。
  • 遠隔配穴局所配穴を組み合わせ、気血の調整と痛みの緩和を図る。